
2025年、火災保険の契約を更新する方々の中には、保険料の高さに驚く方も多いのではないでしょうか。「なぜこんなに上がるのか?」「前より高いのに補償は減っていないか?」と疑問に思われるのも当然です。
実はこの現象、単なる値上げではなく、「2025年問題」とも呼ばれる業界全体の大きな転換点に起因しています。このコラムでは、その背景と現状をわかりやすく解説します。
火災保険料が上がる3つの背景
自然災害の増加と保険金支払いの急増
ここ数年、日本では台風や豪雨による浸水被害が頻発しており、保険会社の支払額は過去最大規模となりました。
たとえば、2018年の台風21号では火災保険だけで、9,202億円超の保険金が支払われ、保険会社の収支は大きく悪化しました。
このような「予想を超える自然災害の連続」が、保険料見直しの主因です。
参考:2018年度発生した風水災に係る各種損害保険の支払件数・支払保険金(見込含む)等の年度末調査について|日本損害保険協会
建築コストの上昇と住宅の老朽化
近年の物価上昇や人件費の高騰により、住宅を再建するための費用(再調達価額)が大きく上がっています。部分的な修理も同様です。
また、築10年を超える住宅は、経年劣化により損害リスクも増加傾向です。
こうした要素も保険料に反映されています。
リスク細分化の進展(水災など)
2022年以降、特に見直されたのが水災リスクの評価です。これまでは全国一律だった水災の保険料が、地域ごとのリスクに応じて5段階で設定されるようになりました。
これにより、河川や海に近い地域では保険料が増加するケースが増えました。
あなたの町のハザードマップを確認してみてくださいね。
保険制度の仕組みも大きく変化

最長契約期間が10年から5年に短縮
かつては35年契約が可能だった火災保険ですが、自然災害リスクの増大に伴い、2015年に最長契約期間が10年に、2022年には5年に短縮されました。
これは保険料の見直しを頻繁に行う必要があるという保険業界全体の判断です。
参考純率の引き上げ
2024年10月、損害保険料率算出機構により、火災保険の「参考純率」が全国平均で13%引き上げられました。これは過去最大の引き上げ幅で、すべての保険会社がこの基準に沿って料率を改定しています。
参考:参考純率とは?・・・保険料率に関するよくあるご質問|損害保険料率算出機構
10年前と2025年、保険料の違いは?
10年前の2015年頃の火災保険料と比較すると、2025年時点の保険料はおおよそ1.3倍〜2倍にまで上昇しているケースが珍しくありません。
(例)築10年・木造住宅・保険金額2,000万円・保険期間10年という条件で契約
2015年の保険料 | 約10万円前後 |
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2025年の保険料 (5年契約×2回に分割) | 合計で約18〜20万円程度 |
この上昇幅を見て、「高すぎる」と感じるのも当然です。しかし、その間に保険会社が背負ったリスクの増加や、補償内容の実質的な見直し(特に水災や風災リスク対応)が加味されている点をご理解いただけると、保険料の変化にも納得がいくのではないでしょうか。
火災保険は「価値」と考える
2015年の制度改正当時、”最長契約期間10年”でご契約された方が、2025年、一度に更新を迎えます。
これから火災保険の更新を控えている方は、保険は「万が一の備え」であり、「コスト」ではなく「価値」として捉えることが大切です。
特に、近年の災害リスクの高さを考えると、更新のタイミングで適切な補償を考えることが、これからの生活の安心を守る一手と考えられるでしょう。補償も10年前から改訂されているケースがあるため、再度補償内容に目を向けることが大切です。
「10年経った今こそ、必要な補償を見直すタイミング」——そう捉えることで、納得感のある火災保険の更新につながるはずです。