
「相続」という言葉を聞くと、「まだ先のこと」「自分には関係ない」と感じる方も少なくありません。
しかし、相続は誰にでも訪れる“人生の引き継ぎ”です。ご家族に安心を残すためにも、早めに準備を始めることが大切です。このコラムでは、相続を考える上での要点と方法をわかりやすく解説します。
相続とは?
相続とは、亡くなった方の財産(預貯金・不動産・株式など)や債務(借金など)を、法律に基づいてご家族が引き継ぐことです。
「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産」も対象になる点は、意外と見落とされがちです。
事業を営んでいる方であれば、これに会社の株式や事業用資産、個人保証なども関わってきます。つまり相続は、“事業の継続”に直結するテーマでもあります。
相続をするとはどういうこと?
相続は必ずしも“受け入れる”だけではありません。相続人には大きく3つの選択肢があります。
- 単純承認:すべての財産と債務を引き継ぐ
- 限定承認:プラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐ
- 相続放棄:一切引き継がない
判断には期限があるため、いざという時に慌てないよう、あらかじめ選択肢を知っておくことが重要です。
生前の対策、何ができる? 事例付き

相続を“争族”にしないためには、生前からの備えが欠かせません。代表的な方法と、その事例をご紹介します。
生前贈与を活用する
生前贈与とは、生きているうちに財産を家族などに譲ることです。
<メリット>
- 贈与税の非課税枠(暦年110万円など)を活用できる
- 財産を計画的に分配することで、相続発生時の税負担や争いを減らせる
- 経営者は、株式や事業資産の一部を後継者に早めに移すことで、事業承継の準備が可能
事例 自宅を将来住む予定の長男へ早めに贈与。相続発生時のトラブルを防ぎつつ、相続税の負担も軽減。 |
生命保険で納税資金を準備する
相続税の納税資金を準備するために、生命保険を活用する方法です。
<メリット>
- ”法定相続人”の非課税枠があり、まとまった現金を確保できる
- 相続発生時に、預貯金や不動産を売却せずに納税可能
- 経営者は、会社株式や不動産の承継時の納税資金として活用でき、事業の継続を支える
事例 相続税が発生する見込みの経営者が、後継者を受取人とした生命保険に加入。保険金を納税資金に充てることで、株式や不動産を売却せずに事業を守ることが可能に。 |
財産の整理・可視化を進める
財産や債務の状況を整理し、家族や後継者が把握しやすくしておくことです。
<メリット>
- 銀行口座、不動産、保険、借入金などを一覧化
- エンディングノートや財産リストにまとめておくと、手続きがスムーズになる
- 経営者は、個人資産と会社資産を明確に区分し、後継者や税理士が把握できる状態にすることが重要
事例 複数の銀行口座や不動産を一覧表にまとめ、エンディングノートに記録。家族がすぐに状況を把握でき、手続きもスムーズに。 |
参考:法務省 https://www.moj.go.jp
国税庁 https://www.nta.go.jp
中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp
相続は未来に繋ぐバトン
相続は「まだ先のこと」ではなく、今からできる準備です。
事業を営む立場であれば、事業と家族を守る目線も必要です。大切な人、思い入れのある事業の未来の発展のためにも早めの対策が重要となります。
信頼できるパートナーや、専門家に相談することで複雑な相続対策を安心の相続に変えましょう。
次回は 「相続を受ける側が知っておきたいこと」 をテーマに解説します。